森倶楽部21
特定非営利活動法人 森倶楽部21
安曇野の長峰山で人と生きものたちが生き生きとつながる里山再生に取り組んでいます

動植物調査

動植物調査について

森倶楽部21では、専門家のご教示を得ながら、蝶、植物、野鳥の観察に特に力を入れてきました。その理由は、放置された里山に人の手が入ることにより、生物相がどのように変化するか、またその手入れが生物多様性に効果をもたらしているか、をモニタリングし、里山保全管理の道筋としたい、と考えたからです。

ここでは、実施している調査の概要をお伝えします。調査結果についてお知りになりたい方は直接お問い合わせください。

蝶の森の調査

チョウ類調査

年によって調査対象エリアは異なりますが、「蝶の森」を中心にルートセンサスを行っています。

期間  4月~10月(計7回)
時間  おおむね11時~14時の時間帯で、約1時間
方法  ルートを設定し、確認したチョウの種類、個体数をエリア別に記録する。

植物・指標植物調査

蝶の森の草原および林縁に自生する植物の中から、多年生草本植物を数種選出し、開花している個体数(または開花茎数)と位置を確認し、記録しています。調査は主に2004年から開始しました。
対象植物は、タムラソウ、ツリガネニンジン、オミナエシ、オトコエシ、ワレモコウ、ホタルサイコの6種である。この調査は草原や林縁に生育する植物の消長を追跡するという目的もありますが、森倶楽部21の会員が環境と植物を結びつけ関心を持って学習することも重視し、①親しみやすい②開花が識別しやすい③比較的数えやすい植物、加えて④チョウが吸蜜する植物を選定しました。

植物・耕起実験調査

蝶の森の草原内において、比較的種の多様性が低く、木本類の進入がよく見られるエリアを対象に調査区を設け、10cmほどの深さで土壌を耕起し、人為的に撹乱する試みを実施しました。耕起は2015年のみです。メマツヨイグサ、カモガヤといった帰化植物やヌルデ、タラノキ、ニガイチゴなどの樹木類は、調査後に除去します。(この木本の除去作業は、調査区以外のエリアでも可能な範囲で実施しています。)

 調査区の位置は草原内の3箇所(A区、B区、C区)で、調査区の面積はそれぞれ2×2㎡です。草原は毎年7月と11月の2回の草刈りを行い、草原を維持しています。調査は9月中旬とし、ブロン・ブランケの植物社会学調査方法により生育する種の被度・群度を調査します。

 

植樹地・オオムラサキの越冬幼虫調査

植樹地は、チョウの食草を植栽した場所でもあり、卵・越冬幼虫等の調査も可能な状態となってきたため、2019年度から調査を行っています。

調査方法は、毎年3月下旬〜4月上旬ごろ、白金町会育成部自然観察会の応援をいただき、エノキの根元半径1m程の落ち葉を1枚1枚拾って探しています。

※2022年の調査ではじめてアカボシゴマダラ(特定外来生物)の越冬幼虫を確認しました。この種は中国大陸、朝鮮半島に分布しており、人為的に持ち込まれ放され定着した外来生物で、神奈川県から関東一円に広がり、近年は県下でも見られるようになりました。その後も注意して観察しています。

絆の森の調査

天平(あまってら)自然園・レンゲツツジ

天平自然園の南側部分はレンゲツツジが自生しており、地元の方達は「ツツジ園」と呼び草刈りを続けてこられましたがが、戸数の減少と共に手が回らなくなり、2004年7月から森倶楽部21がこの場所の手入れをすることになりました。私たちがこの場所の草刈りをはじめた頃は、丈も高く大きな株が10株位見られたが、ツルに巻かれた状態でした。

年2回、天平自然園の草刈りと共にレンゲツツジもツルを取り除き、枯れた枝を切ったりしながら手入れを続けてきました。松枯れにより天平自然園北側のアカマツが少なくなり、風通しと陽当たりもよくなったことに因るのか、自生範囲は拡大するようになった。特に東側は5年程前から次々にアカマツが枯れたり伐られたりした後にレンゲツツジが生えてきたため、2019年から残す株を決め、老木化したものと世代交代を図っています。

2021年から枯死したような枝が多数みられるようになりました。これまでレンゲツツジは有毒植物であるためニホンジカは食べないとされてきましたが、近年各地で、個体数が増加したニホンジカがレンゲツツジを食害することが報告されており、その可能性もあります。引き続き、食害に留意しながら見守っています。

またここでは急速に松枯れが進んでおり、2015年から随時、位置や高さなども含めて枯損の状況を記録しています。

植物・指標植物調査

蝶の森と同様に天平自然園についても、自生する植物の中から、多年生草本植物を数種選出し、位置と個体数(または開花茎数)を確認し、記録しています。調査は2009年から開始しました。対象植物は、タムラソウ、オミナエシ、ワレモコウ、ホタルサイコの4種です。

水田跡地・水生生物調査

耕作が行われなくなった田圃は、一面に植物(オオカサスゲなど)が繁茂し、水の流れがあり、絆の森唯一の水場として、特に水生昆虫にとっては欠かせない生息場所となっています。2003年から8回の調査と共に、毎年1回冬になる前に、池の泥上げ作業と支障木の伐採などを実施しています。

野鳥調査

森倶楽部21は、チョウを指標生物として里山整備を行っていますが、食物連鎖の上位に位置する野鳥との関係も知ろうと、2013年から観察会を兼ねた調査を行っています。講師には、『明科町誌自然編』野鳥担当の編纂委員であった丸山隆氏にご指導をいただいています。